前回の記事で映画「亡国のイージス」について書いたので、クルマには関係ないけどもう一つ映画ネタを行っちゃいましょう。
その映画とは、コレだ!!↓
2015年に公開された「天空の蜂」という映画なんだけど、架空の最新鋭巨大ヘリ「ビッグB」というのが登場して、ある意味それが主役であるわけなので、こりゃ~もうヘリマニアとしては観るしかない!!と、期待に胸が膨らんだのですが―――
その「ビッグB」の絵(CG)を見た瞬間「あ~ひでぇなこりゃ(+_+)」とガッカリした。
これがその画像↓
な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!(@_@;)!!
どんだけデカい設定なのかは知らんけど、操縦席があんなに高い位置であの窓の小ささ!!下方視界ほぼゼロじゃん!?!? いくら無人で自動操縦できるって設定でも、ヘリコプターとしてこれはないな~~~(;´Д`) しかもメインローターの真下に固定翼機並みの大きな翼が付いちゃってるし‥‥‥ もう、これを見た瞬間に「クソ映画」だという悪寒がしたのだけど、「怖いもの見たさ」で特設サイトの予告編を覗いてみたら、1号機が完成して工場内でロールアウトの式典をやる前に子供が乗り込んでしまって、しかもその機体が別の所にいる犯人に乗っ取られて遠隔操作で原発上空へ――― オイオイ、そんな重要機密の新型ヘリが警備ゼロの状態で放置されていて簡単に子供が乗り込めてしまった上に、さらに犯人にいとも簡単に遠隔操縦権を握られてしまうって‥‥‥ ハイ、「クソ映画」確定!!!!
「亡国のイージス」の記事でも書いたように、映画とかには大なり小なり「ツッコミどころ」が存在するものだと思ってはいるが、それにも限度があるってもんだ。
この映画の監督は「ビッグBの形は見るからに怖い「バケモノ」のようにしたかった」「イメージとしては『サンダーバード2号』のような感じ」という趣旨のことを言っていたと思うが、確かにサンダーバード2号と
MH-53Eを混ぜ合わせたような機体デザインだし、取って付けたような主翼はもろにF-4ファントムのそれに見える。
まぁ主役であるビッグBの見た目に監督としての拘りがあるのは理解できる。
だが、現実世界で物理的に無理がある設定を通してしまった時点で、その映画にはリアリティがなくなり「ニセモノ感」が溢れてしまう――― 架空の世界の「SFモノ」ならばそれで良いのかもしれないが。
私が思うには、この映画はヘリコプターが主役なのに「ヘリコプター愛」が欠如している―――それが最大の敗因であろう。
ヘリコプター愛の無さは、ビッグBに乗ってしまった子供の救出に自衛隊が出動する場面での「猛烈な違和感」に繋がる。
↑これがその場面の1カットで、CGと実写を合成しているのだが、手前に写る実写のBell412には「航空自衛隊」の文字と「JA9616」のレジ番が‥‥‥???
このワンショットだけでもう「ツッコミどころ満載」「違和感のオンパレード」で、ヘリマニアとしてはとても許容できない状況なのである。
こんなひどい状況となってしまった理由としては、まず自衛隊の協力が得られていない現実が挙げられるだろう。
まぁ、原発という非常にデリケートな案件を主題に置く内容だけに、自衛隊としては協力できなかったものと想像できるが、逆に監督側が協力要請をしなかったのではないかと思えるフシもある。
その結果、民間のヘリ会社に協力してもらって、民間ヘリを「自衛隊ヘリ」風に改造したものを実写に使用することになり、上のショットのような「ありえない」映像が採用されることになってしまったのだ。
まず、救出作戦に当たったのは航空自衛隊という設定のようであるが、このBell412という機種、いや、もっと広げてベースが同じUH-1でさえも航空自衛隊には配備されていない。
実際に航空自衛隊に配備されているヘリコプターは、救難仕様のUH-60J 1種類のみである。
あ、もう1種類CH-47というのがあったが、タンデムローターの異形のヘリなので同じカテゴリーとは言えないだろう。
Bell412とUH-60Jでは見た目が全く異なるので、「Bell412」に「航空自衛隊」の文字はあまりにも違和感がありすぎるのだ。
さらには、自衛隊機にJAのレジ番が白文字で大きく記入されているのも違和感でしかない。
ちなみにこの「JA9616」は朝日航洋所有機で、私が何度も撮影している機体だ↓
つまり、実写に使うヘリに関することは、塗装(ラッピング)等も含め朝日航洋に委託したのであろう。
だが、ここで「ヘリコプター愛」があれば、Bell412にUH-60Jの「代役」を務めさせるのは無理があると考えるはず。
朝日航洋で持っているS-76ならUH-60Jと同じシコルスキー製で少し似ているけど、レンタル料が高価だろうしラッピングも手間がかかりそうなので、無駄が多いわりには違和感もある感じなのでこれも却下。ではどうする???
私だったらこの場面は陸上自衛隊を出動させるだろう。
ヘリコプター=航空自衛隊、と思うのはシロート考えで、実際には陸上自衛隊のヘリ部隊の方が様々な場面で活動している。
それに、陸自ヘリの主力であるUH-1Jは、ローターブレード数の違い以外はほぼBell412と同じ形なので、色を陸自迷彩色にすれば412でもほとんど違和感はない。
ほ~らね、「ヘリコプター愛」があればシロートでもこれくらい考えられるんだよ。
おそらくは制作スタッフの中(朝日航洋の人も含む)に同じような事を考えた人もいたと思うんだけど、監督にはそれが通じなかった、という事なのかな!?!?
そんな感じで、ヘリコプター愛のかけらもないヘリが主役のこの映画、実際に観ればもっともっとツッコミどころがありそうなので、「怖いもの見たさ」というより「ツッコミどころチェック」のため映画館に観に行こうかとも思ったけど(ビッグBの最高速度は400km/h!!とか理論上あり得ないことを平気で言ってそうなんだもん(笑))、やはりお金払って観るものじゃないと思いやめておいた。
で、しばらく経ってからamazonのPrimeVideoで無料で観られるようになっていたので、どんなツッコミどころが出てくるかワクワクしながら観てみたが、これがもう予想の遥か斜め上を行くクソ映画っぷり(笑)。ヘリコプター愛がないことを抜きにしても、クセのある役者陣がそれぞれクサい演技をやり放題で、10分を過ぎた頃からそれ以上見続けるのは苦行の様相を呈する状況となり、とうとう途中で観るのをやめてしまったのでありました。
でも、最後はどうなるのかだけは見ておこうと思って観たのだけど、いきなり場面が2011年3月の東北に変わり、ここで震災後の救助活動に当たっているのが、成長して自衛隊員になったあの時の子供(向井理)ってことになってて、ここではJA9616がなぜかJA550Sに書き換えられて登場↓
機体横にはやはり「航空自衛隊」の文字。そして向井理隊員が無線で「ファイブファイブゼロ コンプリートミッション アールティービー」って‥‥‥なんてリアリティの無いシーンなんだ(;´Д`)。
基本はまず相手基地局をコールしてから自分のコールサイン、例えば2011年当時の空自救難隊UH-60Jの550号機なら「ヒーローファイブゼロ」とかで、その後「ミッションコンプリート リクエスト ランディング」って言えばホンモノっぽいんだけど(こういう場面で「ミッションコンプリート」はあまり使わないだろうけどね)。
ていうか、こんな非常事態だったら日本語で交信するでしょ!?!? もっと緊迫した様子で「ヒーローファイブゼロ、○○地区で△名収容。いったん戻ります」とか言わせた方が良かったんじゃないの???
というわけで、他人様のことをボロクソにけなしたりする行為はなるべくならしたくなかったのですが、あまりに酷い「ヘリコプター愛の無さ」にちょっぴり腹が立ったので、我慢できずに書いてしまいました。
今回は、この世の中どんなジャンルにもマニアが居て、そのマニアが怒ってしまうようないい加減な描写はしないように注意しましょう、というお話しでした。
(普段映画をほとんど観ないこの私が、映画マニアの方を怒らせてしまったならゴメンナサイ<m(__)m>)