もうすっかり「昔の音楽を掘り下げる企画」となってしまっているこの「JBLプレミアムサウンドシステムで聴く」シリーズですが、そんな状況を打破すべく(?)今回取り上げるのは最近リリースされたばかりのこのCDだ↓
今年デビュー40周年となる杏里の通算26枚目となるオリジナルアルバム「ANRI」だ。
1年前の2017年7月にリリースされたライブ盤「FUN TIME」が、おなじみの曲をいつものミュージシャンの演奏で「スタジオライブ一発録り」したもので、音の良さ、演奏の素晴らしさともに文句なし、という杏里らしいアルバムだったので、このニューアルバムもその路線だろうと勝手に決め込んでいたのだが―――
↑これがCDブックレットの一部抜粋画像(写真、修正しすg‥‥‥(・-゚)\(-_-")バキィッ)。
‥‥‥えーっと、まず目を引いたのがこの曲名たち。どれもどこかで聴いたような杏里の曲っぽいタイトルばかりで、一瞬「また得意のセルフカバーか!?」と思ってしまうが、全部新曲である。
次に気になったのが、編曲がいつもの小倉泰治の手によるものは9曲目のみで、残りの曲はすべて「編曲:坂本裕介」となっているではないか。
坂本裕介――― 申し訳ない。知らない名前だったのでググってみると、以前サンプリング系の音楽で名を売った「Key of Life」の中心人物で、現在は「U-prime Music」という音楽関係の企業(社名は有限会社ユー・プライム)をやっているらしかった。
そこに所属しているアーティストや携わっている音楽を見ると、生楽器バックの音楽とは一線を画すDTM(デスクトップミュージック)系のようで、一抹の不安がよぎる。
さらには、2曲目「feat.Diggy-MO❜」って――― こちらもググらせていただいたら、私の不得手・ラップ系のお方ではないですか‥‥‥ 大丈夫なのか、杏里。
そんな感じで、ちょっと聞くのが怖いような杏里のニューアルバムだったが、入手した時はちょうど仕事が超いそがしいタイミングだったので仕事場のBGM的な感じでリピートしてかけていたのだけど、セルフタイトルアルバムだけの事はあって「ザ・杏里」的ないかにも杏里らしい曲が多く、そんな中にもDiggy-MO❜をフィーチャリングした今までにないテイストの曲も含まれていて、私自身も「ラップ系は苦手」という先入観を捨てて聴いてみると「お、こういうのも悪くないね!?!?」という印象を持つことができた。
プロデューサーや参加ミュージシャンの顔ぶれがガラッと変わってしまっていることで昔からのファンとしてはちょっと心配な部分もあったけど、ワンパターン化するのを避けて新しい世界の扉を開けた杏里のチャレンジ精神は十分に評価できるものだと思う。
そして、このアルバムをしばらくの間BGM的な感じで何度も聴き流しているうちに、最初感じた「このメンバーで大丈夫なのか?」という心配は杞憂に終わったか――― そう感じ始めていた頃、ようやく仕事が一段落してヴェル様のJBLプレミアムサウンドシステムでじっくりと聴く機会が訪れた。
今までのどのアルバムでもこの私の耳を満足させてくれた杏里のCDだ。絶対これもいい音に間違いない――― そう思ってワクワクしながらヴェル様のJBLプレミアムサウンドシステムにこのCDを挿入したのだが‥‥‥ 残念ながら期待は大きく裏切られた。
音場の拡がりや奥行き感、各楽器の定位や音の分離、どれをとっても凡庸な音創りで、ヴォーカルに関しては定位がハッキリしないだけでなくクリアさにも欠け、低域は空気を震わすような極低域の成分は含まれていないがブーミーな印象。シンバルやウインドチャイムの高域の音も繊細さを欠き、演奏そのものも生楽器の温かみが感じられない―――。
‥‥‥と、まぁボロクソに書いてしまいましたけど、これは今までの杏里のアルバムの極上のサウンド――― そう、超一流のミュージシャンの演奏と超一流のエンジニアたちの手によって綿密に仕上げられた極上の音を知ってしまっているだけに、それと同じようなサウンドを期待してしまった結果、激辛のインプレッションとなってしまったわけで、やはりDTMにそれを期待するというのは最初っから無理だったということでしょう。
いや、元々がインターネットで配信し、お手軽なオーディオで聴くことを考えて作っているのなら、これで十分満足できるサウンドでしょう。現にこの私も、仕事のBGMとして聴いている時は満足していたのですから。
どうやら期待が大きすぎたせいで必要以上に酷評してしまったようなので、良い点も書き出しておこう。
バックの演奏は大部分がシンセサイザーだと思うのだけど、サックスに関しては生演奏でこれがなかなか良い。クレジットを見ると「Naoko Kaji」となっていて、いろいろググってみても結局どんな人なのかわからなかった。
ついでに言わせてもらうと、ホーンセクション(トランペット)はシンセサイザーでこれがまた安っぽく、昔の杏里のアルバムの常連だったJerry Hey、Gary Grant、Larry hallのキレのあるホーンセクションと比べてしまうともう情けなくって‥‥‥おっと、また酷評になってしまった(^^;。
というわけで、JBLプレミアムサウンドシステムで聴いてしまうとなにかと不満が出てきてしまうこのアルバムですが、高級オーディオと向き合って聴き込むにはちょっと向いていないけど、ポータブルオーディオ等で気軽に聴く分には最高だと思いますよ!!
最後に、どうしても私が気になるのは、杏里自身がこの音に満足しているのか、ってことなんですけど‥‥‥ 予算の問題とか、いろいろ大人の事情があるんでしょうね、きっと。