もはやカーオーディオの枠を超えて暴走中(?)の「JBLプレミアムサウンドシステムで聴く」シリーズ、今回取り上げるのはこのCD↓
ザ・クルセイダーズが1991年にリリースしたアルバム「ヒーリング・ザ・ウーンズ」。
音楽のジャンルでいうと「ジャズ/フュージョン」に分類されると思う。
もう30年以上前の話になるが、以前ここで取り上げたジョー・サンプルが在籍するグループということでクルセイダーズにも興味を持った私は、1980年リリースのアルバム「ラプソディー・アンド・ブルース」というアルバム(LP盤)をレンタルし、カセットにダビングして聴いていたが、どうもそのアメリカ南部の泥くさいイメージ(?)がいまいち好きになれず、それ以降聴かなくなっていた。
その後バンドの方もメンバーが相次いで脱退したり、やや低迷気味だったところでリリースされたのがこのアルバムだった。
ちょうどその頃の私は、6代目トランポ・ハイエースでカーオーディオに懲りはじめていて、音の良いCDを探しまくっていた時に白羽の矢が立ったのがコレだったというわけである。
当時、音が良いことで定評があるレーベル「GRP」から出されていた(配給的にはMCAとなっているが)ので、まず間違いないだろうという推測もあったのだが、実際に聴いてみて、その音の良さは予想通り‥‥‥いや、予想を超えるものがあった。
当時感じたこのCDの音の印象を挙げると、まず重低音のリアルさ。ドラムの革が震える感じや、ベースの太い弦が振動する「空気感」がリアルに伝わってきたのだ。
そして、各楽器の分離・定位の素晴らしさ。左右の拡がりだけでなく、奥行き感までも再現される見事な音場――― とにかく「音の良いCD」とはこんな風に音場を再現してくれるんだ、ということを私に教えてくれたこのアルバムだったが、ただ音が良いだけではなく楽曲の良さも一級品で、一流ミュージシャンが楽器を身体の一部のようにして繰り出すサウンドはまさに「芸術」と呼ぶにふさわしい内容で、一聴してその虜になってしまった私は、もう何度も何度も繰り返し聴いていたのであった。
そして、6代目ハイエースのカーオーディオに何か手を加えた後、必ずこのCDで(正確にはこれをダビングしたDATで)そのサウンドの変化を確認するのが常になっていた――― つまり、当時の私の「リファレンスCD」にもなっていたのがこのアルバムなのだ。
またまた前置きが長くなってしまったが、私にとって思い入れが深いこのCDを、ヴェル様のJBLプレミアムサウンドシステムで聴いてみることにしよう。
1曲目「ペシミスティシズム」
いきなりで恐縮だが、この曲は昔からどうもあまり好きになれない。
変則的なリズムでも好きな曲はたくさんあるのだけど、この曲のリズムパターンはへんに引っかかる感じでノれないのだ。なので1曲目はパス(←オイオイ、お気に入りのアルバムなのにいきなりパスかよ!?!?)。
2曲目「マーシー・マーシー・マーシー」
ウィルトン・フェルダーのテナー・サックスのソロから始まるのだが、もうこのサックスの音がスゴい!!
何が凄いって、リードの音だけでなく、金属管の中を大量の空気が流れる「ブホ~~~」みたいな音も聴こえる感じで、このウィルトン・フェルダーという人の肺活量は人並み外れたものがあるんだろうなぁ、と想像させられるのだが、そのパワフルなサックスの音像が中央やや奥にビシッと定位し、スタジオの残響も程よく入っている。
そして、ウィリアム“ブッバ”ブライアントのドラムスが超ゆったりしたリズムで加わり、そこにマーカス・ミラーのベースが入ってきてボコボコとリズムを刻む――― この「空気感」がたまらないし、時おりドラムスの重低音が右から左へとゆっくりと移動する様は圧巻だ。
これ、音像的にはスタジオの右端から左端まである超巨大なドラムセットを、これまた巨人のドラマーが叩いているイメージで、実際にはあり得ない音の出方なので、CDの録音評をなさる評論家の先生方に言わせると「ダメな録音」ということになるのだが、私はこういう音創りは大好きだ。
ちなみに、6代目ハイエースのオーディオチェックの際は、このドラムの革が振動する感じと、たまに入る強烈なシンバルのアタック音とその後の金属の響きがちゃんと再現されているかをチェックしていたのだが、ヴェル様のJBLプレミアムサウンドシステムはそれらを完璧に再現してくれた。
3曲目「リトル・シングス・ミーン・ア・ロット」
一転して明るく軽快なリズムの都会的なフュージョン・サウンド。サウンドチェック的には特筆すべきところは無いが、このアルバムの中では聴いていて一番心地良いナンバーかもしれない。
4曲目「哀しみの恋人達」
これまた一転してドヨ~ンと暗いイントロから、ゲスト参加のスティーブ・ルカサーのギターがスタジオの奥の方で泣きまくる。そこに巨大な音像で手前に拡がるジョーのピアノと、やはり奥の方で鳴るウィルトンのサックスが絡み、左右だけでなく奥行きのある音場が拡がる。
ジョーの独特のタッチのピアノと、レニー・カストロのパーカッションの掛け合いが秀逸。
5曲目「シェイク・ダンス」
この曲のリズムは打ち込みを使っているようで、私的にはイマイチ。
6曲目「マプート」
ジョーのピアノ・ソロで始まるが、リズムセクションが入ってくると右奥で低音の打楽器?の音がたまに聴こえてくるのだけど、その空気感がハンパない。ベースのようにも聞こえるが、マーカスのベースはそれとは別に淡々とリズムを刻んでいる。
7曲目「ヒーリング・ザ・ウーンズ」
イントロのバスドラムの柔らかい響きが空気感を伴って出せるかがチェックポイント。
そしてジョーはいつも唸り声を出しながらピアノを弾いているが、この曲では特にそれがよくわかる。
ウィルトンのサックスもここではとても優しい響きを奏でているが、間奏部分のソロではサックスを上下に動かしながら吹いているのが音の感じでわかる。
この曲は、まさに「傷を癒やす」というタイトルにふさわしい優しいサウンドだ。
8曲目「ランニング・マン」
これもドラムが変則的なリズムを刻む曲だが、1曲目と違ってこれは、そのイレギュラーな感じが心地良い。
そしてなんといってもジョーのピアノとウィルトンのサックスの掛け合いが最高。一流ミュージシャン同士ならではの阿吽の呼吸みたいなものが感じられる。
‥‥‥とまぁこんな感じで久しぶりにこのCDをじっくり聞いて、その音の素晴らしさと楽曲の良さ、そしてその演奏の見事さに感動してしまい、もういくらでも解説が書けちゃうんだけど、これはもう完全に自分だけの世界で、読んでる人には何も理解できないですよね!?!?置き去りにしてホントすみませんm(__)m。
今回、ヴェル様のJBLプレミアムサウンドシステムで久しぶりにこのCDを聴いてみたわけだが、やはり素晴らしい音であることに感動し、JBLプレミアムサウンドシステムの音の良さも再確認することができた。
ここのところドリカムとか聴いたりしてたので、可聴帯域内に音をぎっしり詰め込んだような、ボリュームを上げるとうるさくなってしまう音楽に接することがやや多かったので、このCDのような、スカスカの空間に各楽器が浮かび上がってくるような音創りがされている音楽を、大音量で聴くことの心地よさを改めて堪能することができた、という感じだ。
あとやはり感じるのは、生楽器の演奏、それも超一流ミュージシャンのプレイから溢れ出てくる何とも言えない最高の雰囲気、これこそ音楽を聴く醍醐味だと思う。
このアルバム全体に言えることなのだが、ウィリアム・ブライアントのまったりとしたドラミング、ややリズムに乗り遅れ気味で入ってくるウィルトン・フェルダーのパワフルなサックス、ややもするとたどたどしい感じさえ漂わせながらも最終的にはキッチリとまとめるジョー・サンプル独特のピアノ・タッチ、そして一聴して彼の音だと判るマーカス・ミラーのベース――― これらが共演することによって生まれる音の「空気感」というか「タイム感」、これは打ち込みでは絶対出せない「一流の音楽」であり、それがCDで味わえるのは、なんという素晴らしいことだろう!!
‥‥‥だが、このアルバムで素晴らしいテナー・サックスを聴かせてくれているウィルトン・フェルダーは、ジョー・サンプルが他界した約1年後の2015年9月27日に後を追うように亡くなってしまった。
あの、パワフルなテナー・サックスを生で聴くことはもうできないが、このCDでそれはいつでも聴くことができる。
そう、ジョー・サンプルとの息の合った掛け合いも‥‥‥。
↑これ、もしかしたら私が一番聴き込んでいるCDかも???