そして黒髪平を出て約15分で龍頭の滝駐車場に到着。
時刻は8時49分、そして本日の日没時間は16時33分。事前に調べておいた光徳入口バス停の時刻表では16時18分の便があるので、それに乗ることを目標に歩くことにしよう。
そして着替えを済ませ、荷物の準備をしていざ出発。
↑やはりあの紅葉時期の混雑ぶりがウソのような龍頭の滝駐車場。ヴェル様とはここで暫しの別れとなる。
ところで、今回の山歩きには「新兵器」を二つ用意した。
その一つはこちら↓
そう、双眼鏡だ。
バードウォッチングには是非とも携行したいグッズの一つではあるが、以前α77に特大レンズを付けて使っていた時には、大きくて重たいカメラ一式に加え、さらに双眼鏡なんて持ち歩けない―――という感じで、5年ほど前に買ったのに一度もフィールドに持ち出さず「お蔵入り」状態になっていたのだけど、RX10M4にして身軽になったので今回ようやく日の目を見たというわけだ。
バードウォッチングに使うなら明るさが命、そういう意味でこの双眼鏡はすごく良いのだけど、買ってから5年以上経った今、すでにディスコンになってしまっていたんだね。
そしてもう一つの新兵器はコレ↓
いわゆる「トレッキングステッキ」っていうやつ。これも山歩きには必需品と言ってもいいグッズかもしれない。
トレッキングステッキにもピンからキリまであって、どれを買っていいかよくわからなかったけど、とりあえず安くて評判がいいもの、ということでこれをチョイス。
今まで山歩きをしててステッキがあった方がいいと思う場面は多かったので、今回これも初の実戦投入。歩き始めのうちは使い方がよくわからなかったのだけど、結果的にはこれが大いに役に立った。
そんな感じで、9時ちょっと過ぎに二つの新兵器と共に今回の「令和元年最後の」奥日光散策をスタート。クルマもまばらな龍頭の滝駐車場には、私以外にも山歩きの格好を準備中のご夫婦が一組。もしかしたらこのお二人もオオワシ・オジロワシ探しのお仲間かも知れない―――そんな雰囲気が漂う。私は軽く会釈をしてその横を通り過ぎ、中禅寺湖湖畔へと足を進める。
↑10月に来た時は鮮やかな紅葉に彩られていた龍頭の滝も、地味にひっそりと水を落としていた。
この後国道120号線を渡り、舗装路を5分ほど歩くと千手ヶ浜方面への分岐に到着。
とりあえずまだ千手ヶ浜への道には入らずにここを直進し、まずは中禅寺湖湖畔へと向かう。
ここで首から下げた双眼鏡を覗き、周囲の木々にオオワシやオジロワシが居ないか確認する。
これまではこういう場面でもカメラのファインダーを覗いて確認していたのだが、流石は双眼鏡。明るいしその立体感たるや感動モノだ。これなら木々にひっそりと留まっているトリの姿も見逃さず発見できるだろう―――そう思いながら周囲の木々をくまなく探索するが、どこにもトリの姿はなかった。
ふと山側に目をやると、さっきのご夫婦が千手ヶ浜への遊歩道を歩いて行くのが見えたので、私もそれを追うように千手ヶ浜へ向かう。
↑千手ヶ浜への道は湖岸の切り立った断崖に設けられていて、こんな感じ。しばらく歩くと先ほどのご夫婦が立ち止まって湖岸側の木の方角へカメラを向けている。
私は静かにゆっくりと近付いて行き「何か居ました?」と小声で尋ねると、旦那さんが「アカゲラです」と笑顔で答えてくださったので、私も仲間に加えさせてもらう。
↑いつものように餌を求めて夢中で木を突っつくアカゲラくん。
横にいる旦那さんは「かわいいですよね~」と話しかけてくる。やはり最初に直感した通り「トリ好き」の仲間だったのだ。なんだか嬉しくなってくる。
「今日はどこまで歩く予定ですか?」と私が尋ねると「千手ヶ浜まで行ってピストンで戻ってくる予定です」とのこと。「私は千手ヶ浜から光徳入口まで歩いて、バスで戻ってこようかと思ってます」と言うと、半ば呆れたような表情を見せた(笑)このご夫婦とはここで別れ、私はこのアカゲラくんとしばらくの間「遊んでもらって」いた。
そのアカゲラくんもどこかへ飛んで行ってしまい、私も千手ヶ浜へ足を進める。
↑湖岸の道は相変わらずこんな感じ。途中「赤岩」という湖上に突き出た大岩の上に出るのだが‥‥‥
高所恐怖症(^^;な私は恐ろしくってその淵に立つことはできませんでした(;´Д`)。
この後、道は湖畔の平らなところに出る。
水面に目をやると―――
↑真っ赤な目が印象的なハジロカイツブリや‥‥‥
↑金色?の目をしたキンクロハジロなどの水鳥たちが浮かんでいました。
さらに歩くと道は再び断崖に沿って登り、岬状になったところを過ぎると遠くに建物が見えてきた。
↑千手ヶ浜の遊覧船乗り場だ!!
ここも12月に入ると遊覧船が立ち寄らなくなるので閉鎖中。人の姿も全く見当たらないが、とりあえずあそこまで行って一休みしよう――― そう思いながら湖岸の歩道を歩いていた時のことだった。
一羽の猛禽類がその遊覧船乗り場の上あたりをゆっくりと滑翔しているのが見えたのだが、その大きさは遠目にも明らかにトビよりも大きかった。
そして次の瞬間には、そのトリは右側の林の陰に隠れて見えなくなってしまった。
―――オオワシか!?それにしては色が茶色っぽかったからオジロワシか!?!?‥‥‥ 私の心はザワついた。
トリ好きのご夫婦は私より先を歩いているはずだから、今のトリをもっと近くで見ていただろうか‥‥‥いや、もしかすると今もその猛禽類を見続けているかもしれない。私は急いで千手ヶ浜へ向かって歩き続けた。
↑しばらくすると熊窪の分岐に到着。
ここは2年前の同じ時期に、反対方向から歩いてきて高山方面への健脚向けコースを登った時に通った地点だ。千手ヶ浜まではもう少し歩かなければならない。
その後、15分ほどでようやく千手ヶ浜に到着。まずは双眼鏡でさっきの猛禽が消えて行った林の中をくまなく探索するが、見える範囲に猛禽の姿はなかった。
時計を見るともうすぐ12時。湖岸のの砂浜にベンチ代わりで置いてある丸太に座り、ここで昼食を摂る。
↑出発してからここまで約3時間、歩いた距離は6.9km‥‥‥まぁ予定通りと言っていいだろう。
食事を摂りながらも常に上空に注意を払い、さっき一瞬だけ姿が見えた猛禽が飛んできてくれることを期待するが、たまに上空を舞うのはトビのみ。悪いけどトビくんには用はないんだ―――そんなことを思っていると、千手ヶ浜バス停の方角からさっきのトリ仲間のご夫婦が歩いて来た。
「どうですか?何か見ました???」と旦那さん。
「さっき熊窪の手前でこの辺りを猛禽が飛んでいるのを見たんですが‥‥‥」と私が答えると「見ましたか!!」と旦那さん。
お二人は私より先を歩いていて、熊窪を過ぎたあたりでそのトリを見ていたようだ。
「同じのを見てたんですね‥‥‥オジロワシでした。真っ白な尾がはっきりと見えました」
やや興奮気味に旦那さんが答えると、奥さんは「まだこの辺の木に止まってるんじゃないかと思って、ずっと探したんですけど‥‥‥」と、そのオジロワシが消えて行った森の方を指さしながら話してくれた。
「じゃ、私らはもう戻ります」ご夫婦はそう告げて、先ほど歩いて来た道を戻って行った。
やはりオジロワシだったか‥‥‥これは千載一遇、そして一期一会のまたとないチャンス。今日を逃がしたら今シーズンはもうオジロワシに逢うことはできないだろう。こうなったら何としてでも逢ってやる!!―――そう思った私は、この場所でオジロワシが再び現れるのを待つことにした。
しかし、いつになってもトビ以外の猛禽は現れない。
ヒマなので、時間潰しに遠くの風景をいろいろ撮ってみる。
↑男体山山頂。中央やや左の断崖の上に立つ太郎山神社の社、ずっと右の方には二荒山大神立像、その奥に二荒山神社奥宮の屋根が少しだけ見えている。
さらに右の方には山頂で天を突き刺すようにそびえ立つ神剣があるはずなのだが、ここからは地面に隠れて見えない。
↑多くの観光客で賑わう明智平の展望台。あの場所からなら山頂の神剣が見えるのだが‥‥‥。
↑これが以前明智平展望台から撮った男体山山頂。右の方の岩に突き立っている神剣、その左の方には鳥居が見える。
↑そして今回も、対岸の景色は蜃気楼で浮かび上がって見えていた。
この光景を双眼鏡で見ると手前の湖面が盛り上がっていて、地球が丸いことをこの眼で実感することができた。やはり双眼鏡はカメラでは味わえない立体感溢れる生の画を観ることができるので、フィールドにはぜひ持って出たいグッズだ。
―――という感じでヒマ潰しをしながら千手ヶ浜に留まり、近くにいるはずのオジロワシやオオワシが飛んできてくれるのを待ち続けたが、一向にそれらの姿は現れてくれない。
この場所はいつも中禅寺湖からの冷たい風が吹き付けるので寒く、じっとしていると体温を奪われ続けてしまうし、この後の長い道のりと光徳入口のバス時刻も考えると、いつまでもここに留まっている訳にはいかない。私は残りのルートの所要時間を計算し、遅くとも13時にはこの場所を離れて次の目的地に向かって歩き始めようと決めたのだが‥‥‥ 間違いなくこの近くにオジロワシが来ているのに、その姿を観ることなくこの場所を離れるのは断腸の思いであった。
そして予定の時刻になりこの場を離れるものの、もしかしたら千手ヶ浜バス停の方にオジロワシが居るかも知れないと思い、予定にないルートを少し歩いてバス停まで行き、周囲の木々をじっくりと双眼鏡で探索するが、オジロワシどころかいつもはこの辺りで観られる小鳥たちの姿さえも視認できず。
その後また千手ヶ浜に戻り予定していたコースを次の目的地・西ノ湖へと向かって急ぎ足で歩き始め、約40分ほどで西ノ湖に到着。この時点で予定よりだいぶ遅れてしまっている。
西ノ湖方面でオオワシを目撃したという情報も以前見たような気がしたし、つい最近では戦場ヶ原周辺でズミの実をついばむキレンジャクの目撃情報もあって、以前ここでズミの木に真っ赤な実が生っていたのを思い出し、もしかしたら、と思ったのだがいざ来てみると生きものの気配は皆無。ここで待っていても時間のムダと判断し、すぐに今来た道を引き返し西ノ湖入り口バス停へと向かった。
西ノ湖入り口バス停で市道1002号線に入る。この道は4月末から11月までの間は低公害バスが運行されていて、それに乗れば小田代ヶ原まで15分ほどで着いてしまうのだが、歩いて行くとなると緩い登り勾配の舗装路を約1時間も歩き続けなければならないという「つまらないルート」。
おまけに12月に入ると降った雪が融けずに残っていて、場所によってはアイスバーン状態となっていて、注意しないと滑って転倒しかねない。
↑雪上に残っているのは作業関係のクルマのタイヤ痕と動物の足跡くらいで、人の足跡など皆無―――そう、この時期にここを歩くモノ好きな人間なんて、この私くらいのものなのだ。
そんな状況の中を小田代ヶ原へ向かってひたすら歩き続けていると、右側の林の中で何か動いているのが眼に入った。
おっ!猿だ!!
この道では
昨年の11月にも一頭の猿にバッタリと出逢っているが、今回は一頭ではなく集団で、例によって私に気付いても「なんだ、人間か」と一瞥しただけで、その後は餌探しに夢中になっていた。
10頭以上は居ただろうか。なぜか皆この倒木の上を通って山の斜面の方に消えて行った。
猿の群れの出現によって退屈なルートもちょっとは面白くなったが、ここでまた余計な時間を費やしてしまったため、帰りのバス時間に間に合うかどうか怪しくなってきた。
猿たちと別れてから歩くこと約30分、弓張峠を越えてようやくいつもの「オオアカゲラの森」に辿り着き、時計を見ると―――
15時15分。光徳入口バス停で乗る予定のバスは16時18分‥‥‥ヤバい、あと1時間しかない。
ルートマップを取り出してここからの所要時間をざっと計算すると80分!?マジか!?!?
間に合いそうもないからその次のバスの時刻を調べると16時53分―――日没が16時33分だからその時はもう真っ暗、日が沈むと急激に気温が下がるだろうからそれはヤバい、ということで16時18分に間に合うように大急ぎで光徳入口へ向かって早足で歩き続ける。
ここで役に立ったのが今回初使用のあのトレッキングステッキ。最初のうちは使い方がよくわからなかったが、市道1002号線を延々と歩いているうちに自分の手足のようにうまく使えこなせるようになっていて、特に後ろ方向に蹴り出すように使うことによってかなりの推進力が加えられ、脚の負担が大幅に減るし、段差を降りる際も下の段に両ステッキを突いて、両方の手で体を浮かせるようにしてやるとヒザに負担もかからないし、安定して早く進むことができる。これはもう手放せなくなりそうだ。
そんな具合でハイペースで光徳入口へ向かって歩き続けるが、途中雪の深いところもあるので転ばないよう注意することも絶対必要だ(こんなところで骨折して歩けなくなってしまったら、日没も近いしへたすると凍死してしまいかねない)。
↑森の中の歩道はだいたいこんな感じ。ところどころ吹き溜まりになっているし、日陰の木道は積もった雪がアイスバーンになっていて危険だ。
↑時間に余裕があればベンチでひと休みしたいところだが、泉門池はもう暗くなっていたし、素通りして先を急ぐ。
↑ようやく北戦場ヶ原の開けた木道に出る。
ここは日当たりが良いので雪もなく、トレッキングステッキの駆動力を最大限に発揮してハイスピードで駆け抜ける。
もうここまで来れば大丈夫。一安心して振り返ると、もう太陽が山に隠れようとしていた。
そして無事に光徳入口バス停に到着。
時計を見ると16時7分‥‥‥バスが来る時刻までまだ11分あった。終わってみれば余裕の結果だが、これも例のトレッキングステッキのお陰かもしれない。
↑ここまで歩いた距離は19.75km、出発してから約7時間が経過していた。
ここからバスが来るまでの時間がとても長く感じ、寒さが堪え始めた頃にようやくバスが時刻表通りに到着。
乗車後10分ほどで4個目のバス停・龍頭の滝に到着。乗車賃はSUICA で支払い(310円)下車し、約7時間ぶりにヴェル様と再会。
↑時計を見ると16時32分。日没の1分前に帰還って‥‥‥
2年前に歩いた時と時刻から何からまったく同じだよ!?!?なんという偶然!!
でもこれ、改めて読み返すと2年前も今回と似たり寄ったりな内容で、なんて進歩がないんだオレ‥‥‥って愕然とさせられたけど、よく考えると今回は双眼鏡とトレッキングステッキという二つの新兵器が加わったのが大きな進歩だよね(←モノが増えただけで人間の中身は進歩してないじゃん!?!?)。
この日のGPS軌跡はこんな感じ↓
赤線が歩き、黄線は帰りのバス。歩いた距離は20kmを越えました。
参考までにスマホの歩数計はこんな感じ↓
というわけで、今回は後半のひたすら歩き続けた印象が強くって、遠くから一瞬だけとはいえオジロワシを観ることができたという事実も忘れかけておりました。
‥‥‥いつの日か、オジロワシを近くで観て写真に撮ることができる日は訪れてくれるのでしょうか―――???
(完)
~おまけの画像~
帰りはいつものようにオール一般道でのんびり帰ったのですが、途中でヴェル様は「祝!4万km」となりました(^_-)-☆
(「運転しながらの撮影はキケンです」というツッコミはご遠慮ください(笑))