確定申告も済んで、ひさびさの投稿となる「JBLプレミアムサウンドシステムで聴く」シリーズ、今回取り上げるのはこのCDだ↓
1995年にリリースされた古内東子の4thアルバム「Strength」なのだけど‥‥‥
ここで「え!?ふるうちとうこ、ですか???」と思った方、きっと沢山いるんじゃないかな!?!?
そう、古内東子といえば「恋愛の神様」とか「OLの教祖」とか呼ばれたりして、「女性が聴く音楽」というイメージが定着している感じなのだけど、実はそれは大きな間違いである。
まぁ確かに彼女の書く詩の内容は「恋愛あるある」って感じで、そのあたりが女性から支持される、というのは理解できる。
だが「詩の内容が良い」ということ‥‥‥ それは古内東子というアーティストの魅力の一つであることは間違いないのだけど、それはそのほんの一部にすぎないと私は思っている。
逆に、彼女の詩の世界に出てくる男性っていうのが、男の私が聴いていると「そんなオトコいねーよ!!」と思ってしまうこともあったりする‥‥‥ まぁこれは余談だが。
そう、そんな詩の内容よりも私が強く惹かれるのは、彼女の「音創り」に対する姿勢、とでも言うのだろうか――― うまく表現できないのだけど、バックを一流ミュージシャンで固めた生楽器主体の音創りが、私のストライクゾーンのど真ん中に突き刺さってくるのだ。
このブログを隅々まで読んでくださっている奇特な方ならご存じのとおり、私はCDを聴く際にまず参加ミュージシャンのクレジットを確認するのが趣味(?)になっているが、この「Strength」に参加しているミュージシャンのクレジットを見て、もうぶっ飛んでしまった。
‥‥‥以前杏里のCDを紹介する際にもまったく同じような文章を書いた気がするが、こちらは当時まだデビューして3年も経っていない23歳の小娘(笑)。その4枚目のアルバムにこの豪華メンバーというのは、驚きを通り越して衝撃的でさえあった。
↑CDのブックレットに並ぶ超一流ミュージシャンたちのクレジット。どれもすごい顔ぶれなのだけど、マイケル&ランディのブレッカー兄弟、デヴィッド・サンボーン、そしてキーボードの大御所ボブ・ジェームスまで――― これはもうバックの演奏だけでも絶対に聴く価値あり、って感じだ。
このアルバムがリリースされた1995年当時、古内東子はまだブレークする前で、私も名前を見たことがある程度で、それまでに発売されていた3枚のアルバムのこともほとんど知らなかった。
だが、この「Strength」がリリースされた頃、何かのメディアでこのアルバムがNYの一流ミュージシャンが多数参加しているということを知り、ちょっと気になり始めていたところにFMから流れてきたのがタイトルチューンの「Strength」。これが私の心の琴線を強く震わせ、その数日後に私はCDレンタルショップへこのアルバムを借りに行くことになる。
そして借りてきたCDをDATにダビングし、当時の愛車・6代目ハイエースのオーディオで聴きまくった私は、これ以降リリースされた古内東子のアルバムは必ず聴く「東子マニア」になってしまったという次第であります。
というわけで、私を「東子ワールド」へと引きずり込んでしまった「Strength」をヴェル様のJBLプレミアムサウンドシステムで改めて聴き直し、その感想を書いてみることにしよう。
#1 朝
「朝」というタイトルから想像される爽やかなイメージではなく、この曲の雰囲気は‥‥‥そう、夜遊びして寝ずに朝を迎え、太陽が黄色く見えるようなけだるい朝のイメージ(笑)。
それはちょっと言い過ぎだが、イントロからシンセベースの重低音が空気を震わせ、生ドラムと間違うほどリアルなシンセサイザーの打ち込みによる歯切れのよいドラムサウンドがゆったりとしたリズムを刻むところへマイケル・ブレッカーのサックスが入り、そこに古内東子の少し気怠い感じのヴォーカルが重なる。実にいい雰囲気だ。
サビの部分では古内東子の一人多重コーラスに加え、男性の声がユニゾンで口ずさむようにかすかに聴こえるのだが、これが実に効果的な「隠し味」となって、詩の内容は「失恋ソング」なのに、なんだか心が温まるような耳ざわりの良さが残る。
クレジットを見るとこのヴォーカルの男性はポーター・キャロル・JR‥‥‥ アトランティック・スターのオリジナルメンバー??? なんという贅沢な使い方なんだ!?!?
そして、間奏とエンディングで聴ける(今は亡き)マイケル・ブレッカーのサックスは感涙モノだ。
#2 Strength
このアルバムのタイトルチューン。
イントロは哀愁を帯びたピアノソロで始まるが、そこに歯切れのよいドラムスが入ると音場は一転、パンチの効いたリズムセクションをバックに古内東子が力強いヴォーカルを聴かせる。
このアルバムにはドラムスのオマー・ハキムが参加しているという情報を事前にキャッチしていた私は、最初にこの曲がFMから流れてきた時「う~ん、流石にオマー・ハキムのドラミングはタイトでキレがあるなぁ」と思ってしまったのだが、実はこの曲のドラムスはスティーヴ・ジョーダンが叩いているのでした。
この、曲全体をリードする目立ちすぎ(?)のドラミングに、キッチリと合わせて負けることのない力強い古内東子のヴォーカル――― まさにタイトルどおり「Strength」(強さ)を感じさせる一曲だ。
#3 あえない夜
一転してしっとりとした雰囲気のこの曲は、イントロからボブ・ジェームスの優しいピアノの音色が響き、ウィル・リーのベースとスティーヴ・フェローンのドラムスがゆったりとしたリズムを刻む。
そんな超一流ミュージシャンの演奏をバックに、エモーショナルなヴォーカルを聴かせる古内東子。とてもデビューして間もない23歳とは思えないような堂々とした歌いっぷりだ。
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#6 できるだけ
イントロで鳴る特徴のあるベースの音色――― これ、マーカス・ミラーだよね!?
そう思ってクレジットを見ると「Bass Samples by Marcus Miller」と書いてあった。マーカス・ミラーのベースをサンプリングして使っているということか。
そこにボブ・ジェームスのピアノが絡み、オマー・ハキムのドラムスがリズムを刻む――― なんて贅沢なバックなんだ!?!?
そんな一流の演奏に古内東子の切ないヴォーカルがよくマッチした佳曲。オマー・ハキムのドラミングは控えめではあるが、時折見せるスティック捌きは流石と思わせるものがある。
#7 秘密
いきなりサビのヴォーカルから入り、その後スティーブ・ジョーダンの力強いドラムスが正確にリズムを刻むアップテンポな曲。
間奏でランディ・ブレッカーのトランペットが響き、切れの良いホーン・セクションも入るが、古内東子の一人バックコーラスはそれらにも負けないくらい美しい響きを聴かせてくれる。
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#9 幸せの形
イントロからオマー・ハキムの「乱れ打ち」が全開!!――― これ、ドラムやってる人はコピーしたくなるでしょうね!?
でも、オマー・ハキムが楽しそうにドラムを叩いている雰囲気が伝わってきて、曲全体がとても明るくハッピーな空気で満たされていて、聴いていてなんだか幸せな気分になる一曲だ。
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というわけで、全曲解説してたら長くなりすぎるので6曲に絞って感想を書いたけど、アルバム全体を通しての感想はというと、まずニューヨーク録音ということで音の良さは期待通りの素晴らしさ。ヴェル様のJBLプレミアムサウンドシステムが得意とする柔らかな重低音から煌びやかな高域まで自然な感じで再現される。
音場も広く、ヴォーカルは中央にしっかりと定位しバックグラウンドコーラスはその後ろにしっかりと分離して拡がる。
そして、ドラムスとベースのリズム隊の音がとてもメリハリが効いていて、アルバム全体の土台をしっかり支えている、という印象だ。
もちろん参加しているNYの一流ミュージシャンの演奏はどれをとっても素晴らしいもので、このアルバムのクオリティを一段と高いものにしている。
そんな感じで、このアルバムは「フュージョン」や「スムース・ジャズ」等が好きな人には絶対おすすめの一枚です。
古内東子なんて女の人が聴く軟弱な音楽でしょ!?!?――― そんな風に思ってる方はぜひ一度このCDを聴いてみてください。考えが変わると思いますよ。
(古内東子は奥が深いので?また別の機会に紹介させていただくつもりです)